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ミネラルたっぷりの美味しい天然塩―塩炊き屋/今井弥彦さん

新しい海の防人

黒く日焼けした顔に白い歯と笑い皺―平戸で10年、塩を炊き続ける今井弥彦さんは、塩炊き工場の目の前に広がる平戸鹿島の浜を見ながら、「私はこの海を守っていくために塩を作っています」と、屈託のない笑顔で瞳を輝かせながら何度もそう言った。

苦み、辛味、甘みすべてを備えていて「この塩だけで素材の旨味が出る」と、有名シェフから加工食品の生産者、一般家庭にまで幅広く支持されている。

苦み、辛味、甘みすべてを備えていて「この塩だけで素材の旨味が出る」と、有名シェフから加工食品の生産者、一般家庭にまで幅広く支持されている。

今井さんは、海のない長野県松本市から海を見渡す平戸へとたどり着いた。10代後半の時、京都で野菜の引き売りをやり、三重県で林業を、そして四国へ渡り塩作りに出会った。塩作りを学んだのは熊本県天草市。その師匠が言った言葉は「塩作り屋はいろんな土地にたくさんいた方がいい。それはつまり海を守ることになる」だった。今井さんは、自分が守るべき海を探す旅に出た。三重県、四国、九州全域をバイクで走り回る。九州の西の果て、ここ平戸に決めた理由は、この海に”のびしろ”が見えたからだ。「この海はもっともっと良くなる。そんな思いで、町の人を説得しました」

海の子の塩とオリーブオイルを使った鞍掛豆のマリネ。

海の子の塩とオリーブオイルを使った鞍掛豆のマリネ。

どこから来たとも知れない若い男を見て、町の人からはいろんな意見が出た。それは当然のことだった。

「でもそれは、自分の土地を、海を守りたいという町の人の心の表れでもあるんですよ。かえって私は安心しましたね。」

今井さんは、それから半年の間、地元の漁師とともに船に乗り、関係を深め、1年後にやっとこの土地に塩炊き屋を作ることができた。廃材を使って自ら工場を建て、鉄の平釜を用意し、かんすいを作るための枝条架流下式塩田(しじょうかりゅうかしきえんでん)を設置。今井さんはようやく、新しい海の防人となった。

塩は海からの贈り物

大きな平釜を前に、ゆっくりと海水をかき回すこと5日目。白い結晶と化した今井さんの塩が完成に近づく。竈(かまど)には24時間365日絶えることなく火がくべられ、夏は50度近くまで気温が上がるという過酷な状況の中で作業が進められる。今井さんの塩作りは、海水を汲み上げ、濃度を5倍ほどまでに濃くした「かんすい」を作り、ただひたすらに薪で炊くのみ。何も加えない自然のままの塩だからこそ、季節ごとに味わいが違う。春先からは海水中に海藻類が芽生えるため、出来た塩はまろやかになり、そして冬の季節は辛さにパンチがある。海だって生きているのだ。今井さんは、毎日潮の音を聞きながら、海の状態を見守る。

海水を汲み、火をくべ、かき回し、塩をすくいあげる。全てが手作業。完成間近の塩。この状態になるまで、約5日かかる。炊きあげられた塩は平釜から木樽に移され、3日〜1週間寝かされる。にがりをしぼり出し、脱気して完成だ。

海水を汲み、火をくべ、かき回し、塩をすくいあげる。全てが手作業。完成間近の塩。この状態になるまで、約5日かかる。炊きあげられた塩は平釜から木樽に移され、3日〜1週間寝かされる。にがりをしぼり出し、脱気して完成だ。

天然塩の良いところは、上質なミネラル分が豊富であることだ。良い塩が採れる海には、豊かな森林の存在も大きく関係している。山からの養分が海に流れ込み、多くの微生物が育まれて海が生きてくる。今井さんはこの鹿島の浜に、その特徴を見た。だから今井さんは、山の養分が多く含まれる浜辺から海水を汲んでいる。そしてこの浜の、この自然の在り方に、30年、40年先の”のびしろ”を見たのだ。

塩は海からの贈り物と語るひとりの若き防人が、海と山と自然環境に真摯に向き合いながら作る天然の塩「海の子」。それはまさに海と大地の賜物だ。

塩炊き屋
住所/長崎県平戸市獅子町字鹿島2236
Tel. & Fax/0950-28-1535

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